まさかこんな夜中にが来るとは思わなかった。
おれ、大丈夫か?
「で、こんな夜中まで寝れなかったわけだ。」
「はい。」
「なんで怖いの嫌いなくせにそんな話すんだよ。」
「だって…みんながいれば怖くないって思ったんだもん。」
はあ、とエースはため息を吐いた。
の行動にまた呆れたからだ。
こんなのはいつものことだ。
はちょっとおバカだから呆れるなんてことは1度や2度どころではない。
でも、だから可愛くてみんな笑って過ごせるんだ。
しかし今日は違う。
それはここが俺の部屋で、ここに俺としかいないからだ。
しかも夜中。
季節は夏。
彼女ははだけたTシャツにホットパンツ。
ほんのり汗で湿った肌に張りつく髪。
すべてがそろってる。
そう、全てが揃っているのだ。
「はああああ…」
「そんな呆れなくても…エースのばかあー」
ぶーぶーとふくれっ面のを横目に俺はベッドに腰掛けた。
いま呆れたのは怖い話どうこうではない。
断じて。
いま呆れたのは俺の思考に、だ。
何が全てが揃ってるだ。
全て揃っていても彼女の意思、それに俺の勇気があるわけ……ない。
いま少し迷ったのは考えないでおこう。
俺の勇気なんて。
むしろ勇気はあるだなんて考えないでおこう。
「だからさ、エースお願い」
「わかった、わかった。い…!?」
いくらでも話を聞いてやるよ、と言おうと思った矢先、が隣に座ってきた。
ベッドに腰掛けてる俺の隣に。
「ど、どうした?」
「だってわかったって言ってくれた!」
「いや、だから」
「一緒に寝てくれるんだよね?」
一緒ニ寝ルダト!?
俺は立ち上った。
とりあえず理性を保つためだ。
一緒に寝るなんてそんなことは言ってない。
そう、言ってない!!!
「エース?」
背中に視線が当たる。
彼女はきっと不思議そうな顔をしてるだろう。
見なくてもなんとなく想像できた。
「、俺甲板に出てくる…」
そうだ、これでいい。
の顔なんてみたらもうどうなるかわからねェ。
そうやって理性をギリギリ保っている俺。
しかしそんなことなんて理解していない彼女。
俺は理性を守ることに必死で彼女が怖がってここに来ていた事を忘れ、彼女は安心して眠気に襲われていたため思考能力が低下していた。
「行っちゃやだよ…」
歩きだそうとした瞬間、腕が掴まれた。
細くて白い、そして熱い手に。
「怖いもん」
「…」
振り向いたら負けそうな気がして、でも振り向かなきゃ彼女が悲しむから。
「…一緒に寝るか」
「うんっ」
姫、誘惑する
(エース、早く寝よー)