あァ赤髪さん帰ってなかった。よかった。これでエースに怒られないですむ。
…なんて考えが甘かった。
「帰るのか?」
走って行った甲板ではやはりお開きムードになっていたもののまだシャンクスはこの場にいた。
みんなが帰り支度をする中、まだ飲み続ける彼にエースがぶっきら棒に話しかけた。
コイツはすっぽりと抜けたがまた戻ってくるのを待っていたのかコノヤロウ。
「あァ、帰る。王子様がご立腹だからな」
ニヤリと笑われた。
マルコにしろコイツにしろみんな人の恋路を楽しんでやがる。
「あのな…」
「!」
シャンクスのなんでもお見通しというような顔が少し苦手だ。
苦手というよりカチンとくる。
だから言い返そうとしたのだが、俺の後ろにひっそりといたを見つけるや否や彼女の名前を愛おしそうに呼んだ。
「さっき、ルフィの話をしただろう」
「うん!」
またその話での気をとるつもりか。
俺は大きな右手での背中を押しながら自分の船がある方向へ進む彼らをじっと見つめていた。
まァもう帰るんだし、少しくらいいいか。
俺はその辺に転がっているイスを反対向きにして座った。
じっと見つめていても、この距離だと2人が何を話しているのかこれっぽっちも聞こえないな。
「この船も、俺の船も。ルフィみたいにしてまでも海に出たかったヤツの集まりなんだ。」
「…うん。」
「特にエース」
「…」
「あいつはもう辛いこともたくさん経験してるし、感謝することも知ってる。」
「うん…。」
今度は神妙な面持ちで話してやらァ。
もう、何でもいいから俺のを早く返せ。
別に恋人同士でもないのにしっかり嫉妬をしてイライラしている彼の隣にまたマルコが座った。
「お前さんはもっと懐を大きくする必要があるよい。」
じろりと俺はマルコを睨んだ。
でもその通りなわけで。
「どーすりゃ余裕が持てるようになんだよ…」
弱音を吐いたら笑われた。
そんな時、周りがガラっと緊迫した空気に変わった。
横目でを見るとシャンクスに耳打ちされていた。
を心配していたのはどうも俺だけじゃなかったようだ。
ダラダラしている俺とマルコを除いた戦闘員たちはみんな一斉に構えている。
「、あいつをよろしくな」
「…はい!!」
シャンクスの耳打ちが終わり、は彼に向かって敬礼をした。
んな海軍じゃないんだから、と思ったのは多分俺だけだろう。
「じゃあなー」
少しずつ彼の船が動き出す。
まだモビーに残っているシャンクスが振り返る。
おいおいそんな余裕ぶっこいてて大丈夫なのかよ、もう出航してんじゃねェか。
「も、じゃあな」
まだみんなが構える中、シャンクスはの髪を撫でた。
そしてちゅっと可愛い音をたててシャンクスがの頬にキスを落とした。
「「「赤髪〜〜〜〜!!!!!」」」
その瞬間構えていた誰よりも真っ先にシャンクスに飛びかかったのはダラダラとイスに座っていたエースだった。
しかしキスを落としてから一瞬で自分の船に飛び乗ったシャンクスはもう手の届かない所にいた。
「覚えてろよ!!!」
「はっはっは!頑張れエース!!!」
じりじりと睨みつける赤髪もといシャンクスはだんだん小さくなっていって。
でも見えなくなるまで俺に手を振り続けていた。
後ろではがみんなに叫ばれている。
「姫!なんで!!!」
「なんて耳打ちされたんだ!」
「姫、何て言われたの!」
「消毒してあげるからね!」
「「「ひめー!!!」」」
ナースにまでもみくちゃにされたは何も言えずにただただぼーっとして身を任せるだけだった。
姫、キスされる。
「お姫様、ちょっとお部屋行こうか。お説教してやる」
「…ぷう…」
(((エースめっちゃ怒ってる!!!)))