ホントにホントにどうしようこの状況!
あああああああ。
悩んでも解決できないこの状況に嫌気がさした。
ならば楽しんでしまおう!そう決意したけれど、みんなの視線も痛ければ、私の胸もチクンと痛い。
ん?
まてまてなんで胸が痛いの???
「と飲む酒はうめェなァー」
ほんのりと赤い顔をしてこの人はまた一杯を飲み干した。
その赤い髪の海賊はこの船の海賊ではない。
「しかし視線がいてーなァー」
シャンクスが笑いながらうなだれる。
それもそのはず。
みんなのお姫様であるを彼は独り占めしているのだ。
それも膝の上に。
飲みながら時々睨んでくるやつもいればエースのようにずっとこっちを睨んで敵意むき出しなやつもいる。
それでもがここから逃げないのはシャンクスが四皇と呼ばれているからではない。
「ねェ、それでそれで?」
「それでなー」
はこの状況を少し楽しんでいた。
もちろん、シャンクスの膝の上にいることではない。
シャンクスの話がおもしろいのだ。
がさっきから聞き出しているのはエースの小さい頃の話。
「かーわーいーいー!」
「だろ?今じゃあんなにガンとばしてきてるけどあの頃は…」
へらへらと笑いながら楽しく話すシャンクス。
そんな彼を見てたま一つ溜息を落とすのはさっきからガンを飛ばしているエースだった。
「…何の話してんだよ」
「まァ気にすんなよい」
「…も楽しそうにしやがって」
「…」
今日12杯目の酒を喉に通す。
ハタから見ればをシャンクスにとられたやけ酒だ。
まァその通りなんだけれども。
「そんなに気になるんなら奪い返せばいいだろい」
ニヤリとほほ笑んだマルコが言った。
あァそうか、と危うく納得しかけたエースだが、正気に戻れば奪い返すだなんてことはできなかった。
ならばとエースは立ち上り、がいる席の近くへ赴いた。
きっと何の話をしているのか聞こえてきたらこの嫉妬心も少しは和らぐだろう。
「んじゃァ、次の話」
「なになに!?」
「ルフィって知ってるか?」
「うん!エースの弟だよね?手配書で見たことあるの!」
「あァ、そいつもまたエースと同じくらい世話の焼けるやつで」
「エースもそう言ってた!」
俺は近づくのをやめた。
2人の会話にルフィの名前や俺の名前が出てきたから。
みっともないのはわかっているけど、ただそれだけのことで安心できたのだ。
「…やってらんねー」
「おいどこ行くんだよい」
「部屋戻る」
こんな小さいことでいちいち嫉妬して、安心するなんて。
「どうかしてるな」
小さく呟いて自室へ戻ったエース。
自分の部屋は先程までの賑やかさとうって変わって静かだった。
「早く帰らねーかなー」
シャンクスのこと、嫌いじゃなかったのに。
むしろ好きだったのに。
エースがベッドへダイブしてしばらくするとコンコンとノックする音が聞こえた。
「開いてる」
「エース?入るよ?」
「!?」
静かに入ってきたにエースは驚いた。
さっきまでシャンクスのそばから離れなかったがこっちにくるなんて想像もしてなかったのだ。
「いまね、シャンクスに聞いたの」
「何を?」
「腕の話。」
「あァ…」
「ルフィの命の恩人なんだね」
と、いうことはエースの恩人でもあるよね、と言いながらはベッドの端に腰かけた。
エースの腰あたりのマットが少し軋んだ。
「シャンクスと話さなくていいの?」
「…別に」
「久しぶりなんでしょ?」
の手がエースの腰を撫でた。
あァまじですきだわのこと。
エースは上半身を起こし、の肩に腕をかけた。
「頼むから…」
「ん?」
「俺から離れた場所に行くんじゃないぞ」
は大きな丸い目をあけたままコクリとうなずいた。
もちろん、というような顔にこっちが恥ずかしくなったエースはまっすぐ見つめていた目線を横にずらした。
「そうそう、シャンクスもう行くんだって」
「…は?」
「だから呼びに来たんだった!」
「…」
「もう帰っちゃったかも!?」
「おいおいおい、とりあえず行くぞ」
「はーい」
伸ばした手に絡まりついてきた小さい手。
俺はちょっとばかし抜けてるのその手を引っ張って甲板へと向かった。
姫、痛む。
(エースと会ったら胸の痛みがなくなったけどこれって…)