エースのズボンの袖を掴みながらお父さんの前へと進む。
ということは、赤髪の前にも出て行くことになる。











「名前を教えてやれ」

グララララ、とお得意の笑い声をあげてお父さんはそう言った。
それに反応してふと顔をあげるとじっと私を見つめている赤髪と目が合った。
不謹慎だけれどかっこいい、なんて思ってしまった。

「…です。」
「ほォ…か、うん、いい名だ」

少し頬を赤らめながら自己紹介すると、彼は私の頭を優しく撫でた。
大きくて暖かい、まるでエースみたいな人だなぁ。
しかしそのエースはそのに触る赤髪のことを目の前で睨んでいた。

「俺はシャンクス」
「シャン…クス…さん」
「今日はな、おいしい酒を持ってきた。一緒に飲もう、。」

にっこりとほほ笑んだ彼からは他の海賊のような汚らしい雰囲気は出ていない。
この船に以前からいて、久しぶりに帰ってきたと言ってもいいくらいの自然さと暖かさが彼にはある。
そんな彼はニヤニヤしながら、大きくて高そうなボトルを差し出した。

「これがオヤジ用。一級品の酒だ」

これは彼なりのお誘いの言葉。
実は白ひげの海賊たちは聞きなれている言葉である。
しかし白ひげはこの誘いを受けたことはない。
また今日もオヤジは誘いを断るんだろうな。
そう誰もが頭の中で思い描いていた。
赤髪もこりねぇな、とマルコが溜息を吐いた時、にこにこと笑っている白ひげが呟いた。

「…しょうがねェ、たしなんでやるか」

その言葉を聞いて、この場にいる全員が目を丸くして驚いた。
今までシャンクスがどんなに誘おうと乗らなかった白ひげが初めて彼の誘いに乗ったのだ。
シャンクスまでもが目を丸くして驚いていたが、すぐに大きな声で叫んだ。

「野郎ども!」

「「宴だー!!!!!」」

その彼の言葉に両船員たちがが応え、一斉に宴の準備に取り掛かった。
その様子を見て、満足げな顔のシャンクスに突然右手を差し出された
いきなりだったため、すぐに右手を差し出すことができなかったが、彼の顔を見るとにこりと頬を緩ませて笑っている。
そんな彼の右手に自分のそれを重ねた。

「よろしくな、
「はい!」

満面の笑みに満面の笑みで返しながら握手を交わしたその時、大きな風が吹いた。
その風によって彼の長いマントがふわりとめくれた。

「あ…」

彼の左腕がない。
見てしまった。
きっと彼の暗い過去。

「おぉ、これか?よし、あっちで飲みながら聞かせてやろう。」

が一瞬変な顔をしてしまったことを彼は見逃さなかった。
でも彼は嫌な顔一つ見せず、笑顔のままの手を引いた。

「え?あ、はい?」

もう周りは既に飲み始めていて誰がどっちの船員なのか見分けがつかなくなるくらいだ。
そんな中、彼に手を引かれるものだからずっと掴んでいたエースのズボンを放してしまった。

「あ…」
「…」

後ろを振り向こうとした瞬間、シャンクスが肩を抱いてきた。
エースがいなくなる寂しさと、彼とお酒を飲むという少しの不安。
どうか、エース。
お願いだからついてきて。
しかしそんな願いも虚しく、彼はついてきてはくれず、しばらくの間その場に立ったままだった。












姫、戸惑う。
(エース…)