第2章

が遭難しかけた冬島で、エースは船員だけではなくオヤジにまでこっぴどく叱られた。
だが、エースはそれを気にする様子をほとんど見せず、想いに耽(ふけ)る毎日を過ごしていた。

、ふにふにだったなぁ…


そして数日後、ログの溜まったこの船は次の島を目指してゆっくりと、かつ正確に進んでいた。










「エース!なんか食べる?」
「おー何があるんだ?」
「食堂に行かなきゃわかんない!」
「なんだそりゃ」

夕暮れ時。
個人個人が自分のしたいこと、しなきゃいけないことをしている時間。
エースは甲板に寝っ転がって、が貸してくれた世界の生き物図鑑を眺めていた。
一方は好んでやっている雑用が終わり、小腹が空いたのでそんな彼を道連れに食堂へと誘(いざな)った。

「サッチー!なんかちょーだい!」
「おお姫。何がいい?」
「甘くておいしいもの!」
「よしきた!」

食堂では何人かいるコックが既に夕飯の支度を始めていた。
その中でもちょっとヒマそうだったサッチにお願いをして、はルンルンで待つ。
同じテーブルで向かい合って座っているエースもまたに誘われたため、ルンルンだ。
しかししばらくして出てきたのはとんでもない量のケーキやクッキーだった。

「みんな姫のために作ったんだぜ」
「あ、ありがとう」

サッチだけではなく、他のコックまでもがテーブルにお菓子を置いていく。
その様子をじっと眺めるエースと
3つのテーブルが埋まってコックが去ったあと、2人は小声で話し始めた。

、こんなに食えるのか?」
「食べれないよ…エース、食べれるよね?」
「いや、いくらなんでも甘いものをこの量は…」

2人、顔を見合わせて困惑する。
夕飯もすぐそこまで迫ってきているのだ。
これはいくらなんでも2人じゃ食べきれない。
2人じゃ…

「2人でダメならみんなで食べればいいんだ!」
「と、言いますと?」
「甲板に持って行ってみんなで食べよう!」

は目を輝かせて言った。
すぐさま、このテーブルのまま運んじゃえばいいよね、なんて付け加えて。
誘ってもらえたのに2人っきりになれなかったエースは肩を落としながらもその意見に賛成しざるを得なかった。

「…じゃあ運ぶか」
「うん!」

エースは片手で1テーブルずつ、はもう1つのあまり量の乗っていないテーブルをゆっくりと運ぶことにした。

「先行って戻ってくるからゆっくり気をつけて運んどけ、な?」
「うん!」

そう言って2台のテーブルを持ちながら先にダッシュして行ったエース。
は重いテーブルをズルズルと少しずつ運ぶ。
でももう重いし、エースが運んだ方が効率がいいので運ぶのをやめ、その場で待つことにした。

しかし

20分たってもエースは戻ってこない。
もしかして…もうみんなで先に食べてるのかも。
不安になったは両手に持てるだけのおやつを持って甲板へと走った。


「エース!」

甲板に向かう道からエースが見えた。
両手にはもうテーブルを持っていないが、何か集中して見ているようで、の声に気付かない。
もう1度彼の名前を呼んだ。

「エース!」
「え、、待て、」

エースがこちらに気付いた。
その途端静止をかけるも、走っているからすれば手前で止まるなんてことはもう無理に近いことで。
甲板に出きってから横を見れば。

赤髪!!!!!

は目を丸くして、そろーーっとエースの後ろに隠れた。










姫、隠れる。

見られてないよね?
みつかりませんように!!!