この世界で一番有名な海賊、白ひげが乗っている海賊船。
その船に海賊とは似つかわしい少女が乗っている。
彼女は生まれてからずっとこの船で育ち、船員全員の妹同然である。

これはそんな少女のちょっとしたお話。








「「姫の負けー」」
「また負けたあー!」

楽しそうな声が響く甲板。
その甲板には一人の少女と数名の男たちが円を描いて座っている。
少女の名前は
この船にいる(ナース以外で)唯一の女性だ。

「姫は弱いなー」
「ハルタだって弱いじゃん」
「でも俺姫には負けない」
「くそーう」

はババを持ったまま後ろに倒れる。
そのババにまでバカにされてるようで、はそいつを睨みつけた。

「もう一回!」

そして起き上がって一言。
それが先程から何回も続いている。

「もう姫弱いからな」
「うっ…」
「違うのやろーぜ」

今やっていたのはババ抜きだが、サッチにもバカにされた上に、他のゲームを提案された。
ホントはババ抜きで1回でも勝ってから他のゲームに移りたかったものだが。
そんな想いを抱いていたら急に体が震えだした。

「さむ…」
「姫寒いの?」
「ハルタは寒くないの?」
「うーん…少し?それより次のゲームしよ!」
「そしたら上着着てくるから先にみんなでやってて」
「姫早くね」
「はあーい」

は立ち上って急いで自室へ向かった。
そして上着を羽織って部屋から出た時、ちょうどエースとすれ違った。

「おォ
「あ、エースどこにいたの?甲板でトランプしてるからエースもしようよ」
「そうだなー…ってそれよかもうすぐ冬島に着くぞ」
「ホント!?」
「あァ、もっと厚着しとけな」
「わかったー!」

頭をポンポンと優しく叩くエース。
彼はひっそりと彼女に想いを寄せている。

「平和な島だといいね!」
「そうだな」

ににっこりと笑顔を向けられて自然と顔がゆるむ。
なんて幸せな時間なんだ、と彼が幸せをかみしめていると が突然腕に抱きついてきた。

「おい、?」

そんなの行動にエースは戸惑ったが、当の本人は恥ずかしがる様子もなく平然としている。

「冬島はエースの出番だね」
「はい?」
「あったかいからさ!」
「…」

エースはを見てガックリとうなだれた。
あったかいから俺のとこ来んのかよ。
あったかくなくても来いよ…。
そんな心の声が通じてほしくてエースはを睨んでみたが彼女は既にエースを見てはいなかった。
それどころかこの格好のまま歩き始めた。

「いつ着くの?」
「明日らしいぜ」
「明日!?それじゃみんなにも知らせなきゃ」
「お、おい!」

の歩調に合わせて歩いていたエースは静止をかける。
それはこのあとの悪夢に鉢合わせないためだったが、それにはもう遅かったようで。

「みんなー聞いて!明日には冬島に着くって!!」
「「まじ…ってエェェェェエーーーースゥゥゥ!!!」」

船員たちみんなに笑顔を振りまく
そんな彼女を見て、船員たちも笑顔だったのが、急に鬼のような血相に変わっていく。








姫、抱きつく。

「みんな!ちょっと待て!こ、これは誤解だ!」
「みんな怖い顔してどうしちゃったの?」